2012年11月30日金曜日

Childbirth Connection 95周年とLtM-III調査

この「ママの声」調査は、アメリカのニューヨークにあるChildbirth Connectionによる「Listening to Mothers」調査の日本語版です。Listening to Mothers調査は、妊娠・出産についての女性の生の声を集めたアメリカの初の全国調査で、Listening to Mothers-Iが2002年におこなわれ、さらにListening to Mothers-IIとして2006年にもおこなわれました。このウェブサイトの日米比較は、2006年版のアメリカのデータと比較しています。

この調査の3回目、Listening to Mothers-IIIが2013年に実施されるというニュースを見つけました。実現できそう、ということはChildbirth ConnectionのディレクターDr. Carol Sakalaより、今年の初めくらいに聞いてはいたのですが、とうとう決まったようでとても楽しみです。

Childbirth Connectionという組織は、もともとMaternity Center Associationという名称で知られたNPOで、1918年に設立された歴史ある組織です。来年は95周年になるそうです。

https://childbirthconnection.org/95years/index.html

来年が楽しみ。

2012年11月21日水曜日

映画「出産の自由を求めて」 その後

先日ご案内した「Freedom for Birth(邦題:出産の自由を求めて)」の多言語字幕付きDVDが購入できるようになりました。日本の場合はNTSCタイプをお選びください。

DVD購入ウェブサイト:
http://www.freedomforbirth.com/dvd

☆自宅での個人的な家庭鑑賞用(Personal Home-Use)US$32.5

☆図書館、学校、大学に設置する場合。公の場で上映するライセンスも含みます。(Institutional-Use):US$160

☆両親学級などで使う場合。公の場で上映するライセンスも含みます。(Educational-use & Public screenings):US$80

☆既に個人家庭観賞用を持っていて、クラスや上映をする場合のライセンスにアップグレードする場合。(Public Screening / Educational Upgrade):US$47.5


制作者のToniたちは営利目的の映画制作者ではないですし、できるだけ多くの方に観てほしいと思って映画を作っている方たちです。だったらDVDをダビングしてはいけないのかな?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、次の作品を作るための資金になるので、お金に困っていなければ購入していただけるよう私からもぜひお願いします。

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また、先日より、欧州議会への嘆願書が準備されています。もう少しで5000人の署名を達成しそうです。ヨーロッパ市民が主役ですが、海外からも参加できます。もし、ご関心があればご参加ください。嘆願書の日本語訳は下記をご参照ください☆

嘆願書署名ウェブサイト:
https://www.change.org/petitions/human-rights-violations-in-european-maternity-care

この嘆願書を準備しているHuman Rights in Childbirth (HRiC)という組織は、映画の中に出てくる弁護士の方(Hermine Hayes-Kleinさん)が中心になっています。今年の5/30-6/1にハーグでおこなわれた出産人権会議の中心人物のおひとりです。現在、志を同じくする方どうしを世界中でつなげようと、マップを作ろうとされています。日本国内で、産む女性が大事にされる出産、産む女性の権利のために活動していらっしゃるグループや組織をご存知でしたら、ぜひお知らせください☆ 立派な組織ではなく小さなグループでももちろんかまいません。
メール mamanokoe☆gmail.com
(☆→@マーク)

Human Rights in Childbirth (HRiC)のウェブサイト:
http://www.humanrightsinchildbirth.com/


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ノルウェーでは今月、自宅出産についての国のガイドラインができたそうです。一方で、自宅出産に警鐘を鳴らすのですがそれでも病院出産でできるだけ家庭的な雰囲気を大事にする風潮がアメリカ産婦人科学会の最近の記事にあるようです。

映画の中でも言われていることですが、すべての女性が自宅で産むべきだなんて誰も思いません。同一のゴールを目指す上で、いろんな方法があるべきです。重要なゴールとは、どこで産んでも、どこで育てても、母親の仕事ほど大事なものはないということが社会で認識されて、女性が大人として扱われ尊重されることであり、これらの動きはそのためのアプローチの1つ1つなのだと思います。

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<嘆願書の日本語訳>


Petition Letter
嘆願書

To the European Parliament
欧州議会 御中

We call on the European Parliament to take a critical look at childbirth practices in all its member states.
私たちは欧州議会に、そのすべての加盟国における出産現場の現状に注意深く目を向けていただくことを求めます。

Women across Europe face diverse maternity care systems, but they also face common problems. The overuse of medical interventions has made it increasingly difficult for women to achieve a physiological and spontaneous labor. Iatrogenic effects of these interventions are a real and frequent problem in countries across Europe.
欧州には多様な妊産婦ケアのシステムがありますが、共通の問題に直面しています。
過剰な医療介入のために、女性が生理的で自然な出産をすることがますます難しくなっているのです。それらの介入の医原的影響は、欧州の国々においてたびたび起こる切実な問題となっています。

In 2010, the European Court of Human Rights in Strasbourg stated, in the case of Ternovszky versus Hungary, that “the right to respect for private life includes the right to choose the circumstances of birth”. However, many European States have systems of birth care in which women's physical autonomy is routinely violated and their options are rigidly circumscribed.
2010年、ストラスバーグの欧州人権裁判所は、トゥルノフスキーとハンガリー政府が争った裁判において、「個人の生活が尊重される権利は、どんな状況で出産するかを選択する権利を含む」との見解を述べました。しかし、欧州の多くの国では、女性の身体的な主体性が常態的に侵害され、また女性の選択肢がひどく制限されるような出産ケアの体制が存在しています。

The right to give birth outside the hospital is critical for all birthing women, whether they choose for hospital or home birth. The respectful treatment of women who do choose hospital birth can only be ensured if they have the option to walk out and deliver under a different model of care, even if they do not exercise that choice. A different dynamic is in place when a health care provider gives a recommendation with the knowledge that the woman can take or leave the advice, than when that provider believes that the woman can legally be forced if she doesn’t comply.
病院以外の場所で出産をする権利は、病院出産を選ぶか自宅出産を選ぶかに関わらず、すべての産婦にとって重要です。(訳者注:たとえ陣痛中であっても)病院を立ち去り別のタイプのケアを受けて出産する選択肢があってはじめて――実際にはそんなことを実行しないとしても――、病院出産を選ぶ女性が尊厳をもって扱われることが保証されます。医療者が女性に何か忠告をする時、「医療者の忠告を受け入れるか受け入れないかを女性自身がぶことができる、と医療者が認識している場合」と、「女性が医療者の言うとおりにしなければ、(訳者注:警察を呼んだりして)法的な手段を使ってでも強制できると医療者が信じている場合」とでは、医療者と女性の力関係が大きく異なってくるのです。

Observational studies of good quality have documented that planned homebirth is as safe as hospital birth for healthy women. Given the trends and protocols of institutional birth, home birth is often the only way that women in many nations can give birth without unneeded surgical and pharmaceutical intervention.
健康な女性の場合には、計画的な自宅出産は病院出産と同じくらい安全であることが、質の高い観察研究によって報告されています。 施設出産の傾向やプロトコルを考えると、多くの国の女性にとって、自宅出産は不要な処置や投薬を受けずに出産する唯一の方法であることが多いのです

However, many European States do not provide women with an easy access to homebirth services, and in fact many countries makes it incredibly difficult for women to give birth outside of a medical institution.
しかし、多くの欧州の国々では、女性が自宅出産のサービスにアクセスするのは容易ではありません。実際、多くの国は、女性が医療施設以外で出産することを驚くほど難しくしています

We urge the European Parliament to take Human Rights in Childbirth as its point of departure for an investigation and discussion of maternity care systems across the European member states.
私たちは欧州議会に、「出産における人権」を、欧州各国の妊産婦ケア制度についての調査および議論の出発点としていただくよう、強く求めます。 

Sincerely,
心よりお願い申し上げます。

HRiC
出産における人権(HRiC

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Japanese translation: Rieko Kishi, Brett Iimura, Hiroaki Fukuzawa
日本語訳: 岸利江子 飯村ブレット 福澤浩昭

2012年11月12日月曜日

3年ぶりのアカデミック・ハイ

11/1-9に3年ぶりにシカゴに行って来ました。

この調査のデータを使って博士論文を書いてくださった友人のディフェンス(口頭発表&試験)の応援に行って参りました。他にも、滞在中に親友の結婚式に出席したり、この研究についてアドバイスをいただくミーティングをしたり、論文執筆についてのカジュアルなパネルディスカッションに出席したり、旧友に会ったり。3年前まで住んでいたアパートに滞在させていただいて、超多忙ながらもハッピーな時間を過ごせて、リフレッシュできました。

4人のお子さんをもちながら博士課程を見事に終えられた、スーパーママの敬子さん。私が最も尊敬する友人のおひとりです。今回一緒に旅行ができてとても楽しかったです。

研究の二次分析には独特の難しさがあるようです。方法論もあまり発達していません。他の人がデザインしデータを集めた研究を生かすというのは、「話すより聴くことの方が実は難しい」というのと似ているのかも?と思います。
「これから妊娠・出産する女性の役に立ちたい」という気持ちでこの調査に参加してくださった方々の思いを感じてくださり、出産で傷つく女性がいなくなるように、幸せな気持ちで産後を過ごされるように、とこれまでの日本の研究になかった視点で、データに誠実に取り組んでくださいました。
これから日本でこの研究を続けていく上でかけがえのないパートナーを得て心強く、感謝です。




日本から海外へ留学する人が減っているのは全体的な傾向だそうですが、私が留学していたイリノイ大学シカゴ校でも、今回の友人を最後に、日本人在校生がいなくなってしまいました。3年後に大学を訪れたら、先生方も友人もすっかり入れ替わっているのだろうなと想像して、少し寂しい気持ちになりました。


この調査をアイルランドでおこないたいと計画してくださっている研究者の方とは、その後も連絡が続いていて、せっかくなのでヨーロッパの複数の国々でおこなうことを考えていらっしゃるそうです。実現したらと思うと楽しみです。


先日ご紹介した「Freedom for Birth」の映画は、間もなく15分バージョンが無料で公開されます。


久しぶりに研究漬けになって、世界を身近に感じた9日間でした。